第19話
8回目の離婚調停!財産分与の議論での妻側弁護士の嘘を徹底追及!
妻が出ていって1年
この日も、会社を休んで調停に出席しました。
裁判所に着くと、いつも通り『相手方』の待合室で待っていました。
8回目ともなれば、もう慣れたものです。
同じ待合室の人を観察する余裕もできていました。
私の前の席に、男性が二人座りました。
60歳ほどの男性と、その弁護士です。
その男性は不動産の資料を持っていました。
そして、弁護士と打ち合わせをしていました。
気になって仕方がありません。
見ないようにしていましたが、つい目に入ってしまいました。
資料が目に入った瞬間、驚きました。
なんと、不動産を5つほど所有しているようです。
そのうち一つはビルで、金額は2億円…。
全部で10億以上か…。
この人、すごいな。
私は、6,000〜7,000万円を巡ってとても揉めていると言うのに、この人の調停は果たしてどんな議論になっているんだろうか。
そんなことを考えて待っていると、調停委員が呼びに来ました。
今日も同席調停をすることになりました。
私が部屋に入ると、既に妻側弁護士3人が部屋にいました。
目が合った瞬間、お互い軽く会釈します。
それでは、前回の続きを話し合ってください。
よし、私が議論の主導権を握ってやろう。
前回の調停では、2部屋の投資用マンションの分与対象額が1,500万円と決まりました。
あとは、頭金の分与対象額と経家貢献度を何対何に分けるかということになります。
まず頭金の拠出割合ですが、頭金500万円のうち400万円は私からで、残り100万円は共有財産からだという主張は変わりません。
頭金は、私(ヤマト)が90%(450万)、妻が10%(50万)とすべきです。
(※共有財産100万を50万ずつに分ける。)
※
おそらく、妻側弁護士は『そのままでは認められない』と言うだろう。
そう返されることは分かっているが、強気で有利な主張をしておこう。
それは、合意できません!
ヤマトさんの特有財産から優先的に拠出されたという主張には合意できません。
まずは、共有財産から優先的に拠出されたとして頭金500万円のうち400万円は共有財産とすべきです。
せめて頭金は、ヤマトさんが60%(300万)、妻が40%(200万)とすべきです。
(※共有財産400万を200万ずつに分ける。)
妻側弁護士がそのような主張をしてくることは想定済み。
さて、ここからの議論が重要だ。
その主張は到底受け入れられません。
頭金の拠出については私が全て把握していたのに、今更妻の主張を受け入れられるはずがありません。
こっちも、あんたさんのその主張は受け入れられんね!
資金の流れを管理していた私が真実を話しているのです。
これ以外は、後付け話としか考えられません。
妻側弁護士3人はなかなか譲歩しようとしません。
3人揃って、私に強い言葉を投げ続けます。
私は、相当のプレッシャーを受け続けます。
しかし、私は一歩も引き下がりません。
ここで譲歩すると、相手から『強く言えば譲歩する人だ』と思われてしまいます。
ここは、絶対に引いてはいけない所なのです。
20分、30分と時間は過ぎていきます。
時間が経つと、お互い熱くなってきました。
双方、声がどんどん大きく、そして、荒くなってきます。
何度か調停委員から落ち着くように注意がありました。
この時、私は妻側弁護士のある『言葉』を待っていました。
私に何度も精神的ダメージを与えてきた『言葉』を。
私の『切り札の台詞』出すためには、妻側弁護士がその『言葉』を発した時に反論するのが最も効果的です。
私は、妻側弁護士がその『言葉』を使う時を待ち続けました。
3人揃って、大きな声の主張を聞きながら、その『言葉』を待ち続けました。
かなりヒートアップしてきたところで、妻側弁護士が遂にその『言葉』を発しました。
何度も言っているように、
その様な一方的な主張など受け入れられません。
調停委員さん、これはもう不調にしてしまうしかないですなぁ!
さっさと『裁判』しましょ!
『裁判』で白黒つけましょ!
『裁判』だあぁー!
その『言葉』を待っていた。
遂に『裁判』と言ったな。
まだ私が『裁判』という言葉にビビっていると思っているのか!?
私は今日の調停でもう8回目だ!
最初の頃に比べて、経験値はかなり高くなっている!
そんな脅しはもう効かない!
そもそも、この話し合いは私の方が圧倒的に優位な立場にいる。
今日はそのことを認識させてやる!
私は、
深呼吸して、
静かなトーンでゆっくりと話始めました。
不調にするならしても良いんですよ。
裁判しても妻が離婚判決を得られるなんて思っていません。
私はそれを分かった上で、離婚条件の話し合いに応じてあげているのです!
それでも、不調にして裁判にするなら、私は受けて立ちます。
裁判となると、『離婚不可』の判決を取りに行きます。
和解なんて生ぬるい決着などするつもりはありません。
『離婚不可』の判決のみを目指します!
それでも良いなら、不調にしてください!
・・・。
さぁ、裁判官を呼んで調停を終わらせてください!
裁判したいんでしょう!?
・・・。
さぁ、ここで『切り札の台詞』を使ってやろう!
財産分与の議論を始める前に、私は何と言ったか覚えていますか?
私は離婚条件の話に応じていますが、『私は離婚をしないという選択肢』を持っているのです。
私の主張が受け入れられないなら、離婚条件の話し合いを止めても良いのですよ!
この話の決定権は、私が持っているのですよ!
・・・。
私の主張を軽く受け止めてはいませんか?
あなたたちが私の主張を受け入れなければ、この話し合いは中止になってしまうという状況なのですよ!
・・・。
さぁ、どうしますか!?
頭金の拠出割合について、私の主張を受け入れるのか?
それとも不調にして裁判をするのか?
どうぞ、お好きな方をお選び下さい!
・・・。
妻側弁護士3人は何も言い返しません。
『不調にしましょう』と言う気配は全くありません。
ただ、無言で私を睨みつけてきます。
私は腕を組んで3人を睨み返していました。
その時、私は完全に私がこの場を支配していると感じました。
女性の調停委員は、ハラハラしながら見守っていました。
沈黙が30秒ほど続きました。
頃合いを見計らって、私は次の手を仕掛けました。
まぁ、あなた方も依頼人がいる以上、何かしら成果という『お土産』を持って帰らなければなりませんよね。
そこで、一つ提案です。
2部屋の投資用マンションの頭金500万円のうち、私の特有資産の割合は400万円から多少下げる事を許容しましょう。
私の頭期の割合が何%なら許容できるか、あなた方からご提示ください。
さあ、これは本命の着地点が決まるかどうかの瀬戸際だ。
ただ、あれだけ私に強く言われたら、この譲歩案がありがたく思えるだろう。
・・・では、頭金500万円のうち、共有財産分として200万円入れさせてもらえませんか?
先ほどは、共有から400万円と言いましたが、せめて200万円とさせていただきたいです。
頭金は、ヤマトさんが80%(400万)、妻が20%(100万)でどうでしょうか?
この瞬間、
私は時が止まる様な感覚に襲われました。
妻側弁護士のこの発言は、数日前に私が考えていた理想の配分案に着地することを示唆しているのです。
目標とした私が80%となる着地ではないか!?
しかし、すぐに返事をしたらまた色々言ってくるだろう。
ただでさえややこしい相手だ。
ここは『悩んだ末にOKを出した』という演技をしよう。
妻側弁護士の発言の後、
額に手を当てて、
眉間にしわを寄せて、
悩んでいる振りをしました。
妻側弁護士は私の返答を待っています。
調停委員は私の様子を伺っています。
この部屋の全員が私に注目しています。
20秒ほど経ちましたでしょうか…。
とても永く感じられる時間でした…。
私は、
腕を組んで、
深呼吸をして、
ゆっくりと口を開きました。
わかりました。
では、頭金500万円のうち、私の特有財産から300万円、共有財産から200万円としましょうか。
頭金は、私(ヤマト)が80%(400万)、妻が20%(100万)ですね?
(※共有財産200万を100万ずつに分ける。)
はい。
それでお願いします。
不動産の頭金の拠出割合が決まりました。
あとは私の経営貢献度を決めるだけです。
離婚条件の最大の焦点である不動産分の財産分与の議論も、大詰めを迎えています。
では次に、私の経営貢献度を決めましょう。
前回の調停でお話しした様に、私の不動産経営への経営貢献度を90%だと主張します。
こちらは50%と主張します。
ヤマトさんが不動産経営をしている間、奥様は家事で貢献していたのだよ。
夫婦は二人三脚なのだから寄与度は50%ずつだ!
おいおい…。
私の経営貢献度について話し合うことに合意したのに、『経営貢献度は半分ずつ』と主張するなんて、最初から経営貢献度を認めていないことと同じではないか。
本当に面倒な相手だ。
まぁ、いつものパターン通り最初は高めの主張をしてきているのだな。
それは受け入れられません。
そこで、私のぎりぎりの着地点をお伝えします。
私の許容できる着地点は、私の経営貢献度85%です。
これは、主張ではありません。着地点です
こちらの考えでは、せめて3分の1、つまり66%だ。
すいません!
議論が白熱しているとこを申し訳ありませんが、そろそろ時間です。
続きは次回にしましょう。
こうして、8回目の調停は終わりました。
妻側弁護士は、今まで何度も『裁判』という単語で私にプレッシャーをかけてきました。
しかし、私は調停にも先方のやり方に慣れたのです。
たとえ『裁判するぞ』と脅されても、
冷静に考えて受け流すことができるようになっていました。
私が、ここまで強く反論できたのはなぜか。
その理由を考えてみました。
離婚調停についてしっかり勉強したから。
弁護士に相談して頭が整理できたから。
そして、勉強も相談も十分していたので、自信を持って主張ができたからでしょう。
調停は、裁判とは違って話し合いです。
しかし、何の準備も無く行くなんてとんでもない。
準備をしていなければ、相手に言いくるめられてしまいます。
そうなると、なかなかこちらの主張を受け入れてくれなくなります。
調停に来ている段階で、ほとんどの人は弁護士を伴っています。
調停に弁護士が同席すると、その安心感はとても高いでしょう。
もし一人で来ていても、個別に弁護士相談はしています。
少なくともかなり早い段階から相談をしているでしょう。
調停には、万全の用意で挑みましょう。
調停でどう主張するかで、お金をはじめとする多くのことが決まります。
人生のリスタートの資金が、数十〜数千万円変わってくるのです。
次の調停が数日後に迫ってきた時のこと。
私は、調停でのふとあることを思い出しました。
調停で、はっきりさせないと気が済まないことがあったのです。
それは…。