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養育費の正しい知識とは!?
- 夫A氏は、40歳後半の会社員。
- 妻Bさんは、30代後半のパート社員。(相談者)
- 子どもは、6歳の息子が一人。
A氏とBさんの夫婦は、もうすぐ結婚生活10年目を迎える。
多くの夫婦は10周年記念を祝う。
しかし、この夫妻は離婚調停の真っ最中なのだ。
離婚は妻Bさんから切り出した。
3年程前から夫が精神的虐待(モラハラ)を繰り返すのだ。
最初は耐えていたが、ついには限界を迎えた。
昨年、妻Bさんは子どもを連れて実家に帰ったのだった。
別居と同時に妻Bさんは離婚請求した。
同時に婚姻費用も請求した。
当初、夫A氏は離婚には強く反対していた。
だが、別居してから3ヶ月も過ぎたころ、離婚に応じる考えを見せてきた。
一人暮らしに慣れたことと、婚姻費用の支払いが金銭的にも辛かったのだろう。
離婚が合意できたので、今は離婚条件を話し合っている。
妻Bさんは、離婚後の生活を考えると、とても気になることがある。
それは、養育費だ。
財産分与はほぼ合意できた。
婚姻期間が10年ほどもあったので、400万円も貯金できた。
このうち、半分の200万円は妻Bさんのものとなる。
だが、これだけでは将来の生活費にするには足りない。
それに、子どもにはそれ以上にお金がかかってしまう。
正直、妻Bさんのパートの収入だけでは生活が苦しい。
安定な職とは言えないし、子どもにかかるお金はどんどん高くなるだろう。
そのため、養育費はしっかり払ってもらいたい。
なんといっても、子どものためにかけるお金だ。
習い事もしっかり受けさせたいし、塾も当然通わせてあげたい。
だが、はたしてどのくらいの金額が支払われるかは分からない。
また、夫が途中で養育費を支払わなくなったらどうすれば良いのか。
さらに、将来A氏やBさんが再婚した場合にどうなるのか。
養育費はいくらに決まるのか、心が休まらない日が続いている。
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養育費の存在意義
結婚生活が円満な時、子どもは両親と共に生活します。この時、子どもがいることで住居費、光熱費、食費、衣服代などがかかります。これらを、広い意味での養育費と言います。夫婦関係が円満な間は特に意識をせずに支出している状態です。
しかし、いざ離婚すると事情が変わってきます。離婚すると、多くの場合、子どもは母親と共に暮らすことになります。家庭裁判所は、母親を親権者とすることがほとんどなのです。
ただし、離婚して離れて暮らすことになっても、父親も母親と同じく親であることに変わりはありません。そして親である以上、子どもを養育する義務があります。そのため、親権者(母親)は離れて暮らす父親に、子どもを監護・養育する費用の分担として養育費を請求することができるのです。
養育費の支払い期間
養育費の支払い期間は、離婚成立時から始まり、子どもが20歳となる月で終わるのが一般的です。ただし、大学に進学すると20歳を超えても金銭的には自立しているとは言えないので、協議を行った上で大学卒業時まで支払いが続くことが多いです。
ただし、養育費は受け取る側(母親)が請求しなければ受け取ることができません。一般的には、離婚協議や離婚調停での離婚成立時に、養育費の金額と支払い期間を決定してます。
養育費の金額の決め方
養育費の金額は、婚姻費用と同様に算定表を用いて決めることが多いです。
ただ、婚姻費用は配偶者と子どもの生活費と定義されていますが、養育費は子どものみの生活費となります。そのため、一般的には婚姻費用よりも金額は小さくなります。
夫婦のお互いの年収と、子どもの数・年齢を基にして、算定表によって決められます。一般的に、父と母の年収差が大きい程、そして、子どもが多くて年齢も高い程、養育費は高くなります。
算定表の見方
ここで、算定表の見方を紹介します。
前提は、母親が親権者かつ監護親と決まり、父親に養育費を求めた場合とします。
- 父の前年度の年収は610万円
- 母の前年度の年収は110万円
- 6歳の子どもが一人
※表
@婚姻費用か養育費、子供の数、子どもの年齢から、
『養育費・子1人表(子0〜14歳)』
を選択する。
A縦軸で父の年収を定める。父の年収610万円に近いのは600万円なので、600万円を基準とします。
B横軸で妻の年収を定める。妻の年収110万円に近いのは100万円なので、100万円を基準とします。
C縦横の2つの値から伸ばした線が交わるのは、『10〜12万円』であることがわかる。
D『〜万円』の2万円の範囲内で調整を行って金額を確定させます。『〜万円』の範囲の中でも、真ん中に近い位置にあるので万円を基準とすることが多いです。ただし、当事者同士の具体的な状況を考慮して決められます。
算定表は、裁判所のホームページに掲載されています。
※裁判所HP
なぜ年収を基にして養育費が決まるのか!?
養育費は、夫婦の年収が大きな要因となっています。一般的には、夫婦間の年収が大きいほど、養育費は高くなります。
ただし、ここである疑問が浮かびます。
一般的に同じ地域内であれば、子供を養育していく費用はどこの家庭もそれほど大きく変わらないはずです。しかし、同じ地域内の複数の離婚した家庭を調べると、それぞれの家庭で支払われている養育費は異なります。
なぜ、養育費はそれぞれの家庭で異なるのか?
その理由は、養育費制度設立の考え方にあります。
子どもは両親が離婚していなかった場合、どのくらいの生活水準化を送っていただろうと考えられます。世帯の年収次第で、住居はもちろん、食事、娯楽、受けることができる教育環境も変わってきます。
養育費はその様な、『離婚していなかった場合の生活水準』を想定しているのです。そのため、義務者(父親)の年収の多い場合は、子どももある程度裕福な生活を送る権利があるという考えに基づいて、養育費が設定されるのです。
こんな場合、養育費はどうなる?
養育費の金額は、離婚成立時に決まります。
しかし、養育費の支払い期間は数年〜10数年に渡って続くことになります。そもそも、当初想定していなかった問題や事情の変更が起こり得ます。ここでは、最初決めた養育費金額や支払い全般に関する問題を取り上げます。
育てている親(主に母親)が再婚した場合
母親が再婚した場合でも、実の父親は養育費を支払い続けなければなりません。
ただし、再婚相手と子どもが養子縁組を結べば、再婚相手が養育していく責を負うことになります。そうなると、実の父親は養育費を支払う義務がなくなります。
ここで重要な点があります。義務者である父は、元妻の再婚や子どもの養子縁組を把握できるのかという問題です。母親が養子縁組の事実を義務者である実の父親に伝えてなければ、父親は養子縁組を知らないままなので、養育費を支払い続けることになります。
それを防ぐには、養育費の条件を定める段階で、『再婚や養子縁組をした場合は双方共に速やかに伝える』といった取り決めをすることです。また、支払い期中にでもできれば適宜確認すべきです。
養育費を支払っている親(主に父親)が再婚した場合
義務者である実の父親が再婚した場合も、養育費は支払い続けなければなりません。しかし、父親はその金額を、元妻の再婚前よりは低くなるよう主張することは可能です。
義務者(父親)が新しい家庭を持った場合、養育費の支払いと新しい家庭での生活費の支払いで生活費はギリギリになる可能性があります。しかし、それを理由に養育費の支払いを止めることはできません。実の父親が新しい家庭を持っても、離れて暮らす子どもも責任持って養育していく義務があるのです。
しかし、親権者の母親と話し合って、今後も継続的に養育費を支払うためにも、継続的な支払いが可能な額に減額を要請する場合が多いです。ただし、実際に減額されるかは交渉次第です。
もし、父親の生活が難しくなる様であれば、養育費分担の調停を申し立てることが可能です。
義務者(父親)の年収が上がったor下がった場合
養育費の支払いは数年〜10数年といった長期間に及ぶため、その途中に年収が増減する可能性があります。年収が変動する原因は、昇格・降格、会社の業績、転職などが考えられます。この時、養育費は年収を基準として設定されているので、年収の増減で、改めて養育費の金額を設定し直したいと考えるのはよくあることです。
一般的に、義務者(父親)は、年収が下がった場合は養育費の減額交渉をしたいと思うはずです。一方、監護親(母親)は、義務者(父親)の年収が上がった場合は養育費の増額交渉をしたいと思うはずです。
年収の変更を理由とした養育費の交渉は可能です。ただし、一度決めた養育費を変更することを申し出ても、相手が素直に受け入れるとは限りません。ましてや、相手側にとって損となる条件の変更はなかなか受け入れられないでしょう。
その様な場合、事情の変更として、養育費分担調停を申し立てることが可能です。
面会交流を拒否されているので養育費を払いたくない場合
養育費と同様に面会交流も離婚後も数年〜10数年続きます。その間、父と母の関係が悪化して、面会交流が行われなくなることがあります。
義務者(父親)としては、何度も面会交流が行われないと養育費の支払いを止めたくなりがちです。しかし、面会交流が行われないからと言って、養育費の支払いを止めることはしてはいけません。例え面会交流で会えないとして、子どもの養育には費用がかかっています。その費用は、父親である以上支払わなければならないのです。
もし、面会交流が母親によって不当に妨げられていると感じるのならば、裁判所に面会交流の遂行を訴える方法があります。そうすると、裁判所から派遣された裁判所調査官がどういう理由で面会交流ができないかを訪問によって調査してくれるのです。もし調査によって、不当な面会交流の遮断の場合は、母親に罰金を科される可能性もあるのです。
義務者(父親)が養育費を払わない場合
養育費は、法律で決められた義務です。
多くの家庭では、主な収入源である男性が支払い義務を負います。しかし、養育費を請求された男性の中には、支払わない人もいます。しかし、生活費としての養育費が支払われなければ、子どもの平穏な生活を送ることが難しくなる可能性があります。
義務者(父親)が養育費を支払わない場合、母親は父親の勤務先の給与を差し押さえすることができます。差し押さえることができる金額は、差し押さえできる金額は手取りの2分の1までです。ただし、会社役員の場合は、報酬全額分が限度額となります。
養育費のまとめ
養育費は、収入の高い側(父親)が低い側(母親)へ支払うことになります。
しかし、支払い義務のある人のうち、たった2割しか支払っていないのです。
養育費は、子どもが健全に成長するためになくてはならないお金です。子どもを生んだ以上、親として自覚を持つべきことが求められます。
もし、養育費の支払いが苦しく感じるなら、いきなり支払いを止めるのではなく、相手と誠実な話し合いで解決することがあります。